ダーリントン接続は、トランジスタ二つの接続方法のひとつです。トランジスタの特性の一つに直流電流増幅率 hFE があります。ダーリントン接続したトランジスタは、全体としてより大きな hFE を持つ一つのトランジスタのように機能します。本ページでは、実際にダーリントン接続を行い、通常の回路を比較して大きな hFE が得られていることを確認します。トランジスタには、こちらのページと同様に 2SC1815 を利用します。
回路図の左半分が通常の回路です。回路図の右半分がダーリントン回路です。
http://schematics.com/project/darlington-44690/
ベース電圧が 0 V となるように可変抵抗を操作すると、コレクタ電流は流れないため 110Ω 抵抗における電圧降下は発生せず、トランジスタにおけるコレクタ・エミッタ間電圧が 6V となります。これは 2SC1815 のデータシートに記載されている最大定格 50V よりも小さいため問題ありません。また、ベース電圧が十分大きくコレクタ・エミッタ間電圧が理想的に 0V となる場合のコレクタ電流は、抵抗 110 Ω のため 55mA に抑えられます。これもデータシートに記載のある最大定格 150mA より小さいため問題ありません。
可変抵抗 10kΩ を操作したときのコレクタ電圧の波形を、それぞれの回路についてオシロスコープで観測しました。直流電流増幅率 hFE が大きいダーリントン回路のほうが、コレクタ電圧の降下が大きいことが確認できます。これは、ダーリントン回路のほうがコレクタ電流が大きく、抵抗 110 Ωにおける電源電圧 6V からの電圧降下が大きいことを示しています。ダーリントン接続によってトランジスタの感度が高まることが確認できます。
コレクタ電流は約 3V / 0.110kΩ = 27mA
です。
コレクタ電流は約 5V / 0.110kΩ = 45mA
です。通常の回路と比較して約 1.7 倍となりました。
『トランジスタを用いた基本的な増幅回路』で記載したとおり、トランジスタのベース・エミッタ間に電圧が 0.6V 程度以上がかかるとコレクタ電流が流れます。今回の回路では特にエミッタ側の抵抗が存在しませんので、理想的には電源電圧すべてがコレクタ側の抵抗で 0V まで降下することになります。先程のページにおける増幅率が無限大の状態です。
本ページでダーリントン接続の検証を行うために利用した二つの回路は、どちらもトランジスタを用いたスイッチング回路として機能しています。オシロスコープで観測して分かったとおり、十分なベース電流および hFE が確保できる場合において、コレクタ電圧はグランド 0V と電源電圧 6V の間を瞬間的に遷移します。このトランジスタによるスイッチングを利用して、モーターを回転させたり LED を点灯させたりすることができます。